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最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)660号 判決 1968年11月15日

上告人

高野繁生

代理人

高橋猪兎喜

ほか四名

被上告人

愛知機械工業株式会社

代理人

吉田司郎

ほか一名

主文

原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

被上告人が第一審判決添付目録記載の宅地につき、大分地方法務局昭和二九年三月一五日受付け第一四一二号抵当権に基づいてした、大分地方裁判所同年(ケ)第六二号競売事件の競売手続を許さない。

訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理由

上告代理人高橋猪兎喜、同梶谷丈夫、同宮田耕作、同梶谷玄、同舟辺治郎の上告理由について。

本件第三者異議の訴えは、上告人は昭和二八年一二月一〇日丹下周市よりその所有にかかる本件土地の譲渡(原判決にいう売買)を受け、翌二九年二月四日これによる所有権移転登記の仮登記、同年九月一五日右仮登記に基づく本登記を経由したが、被上告人が右仮登記後本登記前の同年三月一五日抵当権設定登記を経由して、その実行を申し立て、同年七月二七日本件土地に対する競売開始決定を受けたので、上告人は該所有権に基づいてその競売の不許を求める、というのであり、被上告人は上告人主張の所有権の取得原因たる本件土地の譲渡の効力を争い、これが詐害行為にあたるとして、その取消しを求める別訴(原裁判所昭和三六年(ネ)第六六号、第六七号、当裁判所昭和四二年(オ(第六六二号)を提起したものであるから、別訴における詐害行為の成否の判断が本件の異議事由たる所有権の存否に関する判断の先決問題をなすことが明らかである。

このように、詐害行為の成否が第三者異議の異議事由の存在に関する判断の先決問題となる場合であつても、両者が本訴および反訴の関係にあつて、同一の裁判所において併合審理され、その結果、詐害行為取消権が存すると判断され、異議事由たる所有権の所得が否定されるべきことが裁判所に明らかなときは、本訴である第三者異議訴訟は排斥を免れないとすることは、当裁判所の判例とするところである(当裁判所昭和三四年(オ)第九九号、同四〇年三月二六日第二小法廷判決、民集一九巻二号五〇八頁)。

しかしながら、第三者異議の訴えと詐害行為取消しの訴えとが別訴として提起され、その弁論も併合されず、それぞれ別個の判決がなされる場合は、これと同列に論ずることはできない。しかも、本件において、原審が詐害行為取消しの別訴につきその原告たる被上告人勝訴の判決をした判断に違法があつて、これが破棄されたことは、当裁判所に顕著なところであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

そして、原審の確定するところによれば、本件の事実関係は前記上告人の主張のとおりであつて、被上告人が実行を申し立てた本件抵当権は、これをもつて上告人に対抗しえないことが明らかであるから、上告人の所有権に基づく本件第三者異議の訴えは正当として認容すべく、これを排斥した一審判決を取り消すこととして、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 色川幸太郎)

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